堀口恭司が語る、アメリカで学んだ堀口流メンタル調整術とは

MMA(総合格闘技)の世界最高峰であるアメリカUFCでアジア人初の王者を目前にしながら、日本へ電撃帰国しRIZIN参戦、見事に鮮やかな勝利を飾った堀口恭司。

アメリカン・トップチームで鍛えられた技術と、ルーツである空手の技術が高い次元で融合したファイターだ。堀口恭司の高いパフォーマンスはいかにして準備されているのか、そのメンタルやトレーニングの裏側を、RIZIN試合後に訊く貴重な機会を得た。

RIZINは、納得できる勝ち方ではなかった

RIZINでの帰国後初勝利おめでとうございます。試合から約10日経って、現在の心境はいかがですか。

まずは勝つことができて、ホッとしています。でもしっかり決めることができなかった、KOできなかったので、納得はしていないですね。空手の先生からはカツを入れられて、凄く落ち込みました(笑)。でも、こうやってカツを入れてくれる人が周りにいるのはとても有難いですし、次へのモチベーションにもなります。その期待に応える役目を果たさなければ、と思っています。

久しぶりの日本での試合でしたが、準備は順調でしたか。

海外での試合とは違い、慣れている環境での生活や食事のおかげで減量も順調だったので、リラックスしてのぞむことができました。試合では集中できましたが、試合の1週間前までは「これから試合だよな?」って少し混乱するぐらい、リラックスしていましたね(笑)。

アメリカと日本ではやはり大きな違いがありますか。

アメリカでは、試合環境よりも食事に苦労しましたね。何を選んでもボリュームがあるし、残してはいけないという感覚もあって、太ってしまいました。日本の場合はヘルシーなものも多いですし、どこに行けば買えるかもわかっていますから、減量や軽量後の食事に対するストレスがなくてほっとしますね。

堀口さんの減量はどのように進めるのですか

1カ月程前から、サウナスーツを着て走り始めます。食事面ではあまりストイックに制限するのではなく、1日2食、脂っぽいものは控え、魚や野菜中心に食べたいものをしっかりと食べます。1週間前からは量もコントロールしますが、その頃には胃も小さくなっているので、少しの量でもお腹いっぱいになります。身体が慣れるように調整していきますが、どんなに頑張っても、最後の1~2キロを落とすのは本当に辛いですね。

ダイエット中の方にアドバイスするとしたらどんなことがありますか。

ストレスを溜めないことですかね。ダイエットは、食べる量ではなく質を変えるのが良いと思います。小腹が空いた時もただ我慢するんじゃなくて、食べる内容を考えて、ストレスを溜めないことがコツだと思いますね。みんなストレスを溜めすぎて、もういいや!ってなっちゃうんで(笑)。

アメリカと日本。トレーニングの考え方における違い

アメリカと日本のトレーニングでは、どのような違いがありますか。

日本では、同じ練習を繰り返して記憶させる、身体に動きを染み込ませるトレーニングが伝統的に中心です。いっぽうアメリカでは、新しいことをどんどん取り入れるために毎日違うトレーニングをして、自分に合ったものを自分で選んでいきます。効率的に技術が高められる気がしますね。

何よりも、日々のトレーニングで“追い込まない”んです。アメリカに行ったばかりの時は「えっ、これで終わり?」と思ってしまう練習量でした。物足りなくてメニューにプラスで練習をしていたら、「練習のやりすぎだ。リラックスする時はとことんリラックスしろ」って怒られるんです(笑)。海外の選手はオンとオフをしっかり分けて、休息を上手に取り入れ、追い込むのは試合前だけですね。

練習環境にも大きな違いがあります。日本では、ボクシング、レスリング、柔術など、それぞれの技術を学ぶ場所が別々にあるため、学んだことをどう組み合わせ取り入れるかは自分で考えなくちゃいけないし、移動も時間がかかる。でもアメリカでは、いろんなジャンルのコーチが一つのチームに所属しています。アメリカン・トップチーム(ATT)では選手約40名に対して、異なるジャンルのコーチが十人くらいいるんです。チームのジムに行けばそれぞれの技術指導を受けることができますし、コーチ同志がコミュニケーションを取っているので、選手に一番良い方法を考えてくれます。コーチ自身もどんどん新しい技術を身に付けていますし、良いことはどんどん取り入れよう、そんな気持ちで指導をしてくれます。プロの選手にとっては、自分のスタイルに合ったコーチとの出会いはとても重要ですね。

趣味でトレーニングや身体を動かされている方は、話が合う、楽しめる、リラックスできる、そして心地良い空間かどうか、気持ちが良いとか、そういった感覚がトレーナー選びでは大事だと思います。

そんな環境下で、トレーニングへの考え方や取り組み方はどのように変化しましたか。

休息の取り方は学んだことのひとつですが、基本的なトレーニングや考え方は日本にいた時と変わっていません。アメリカのコーチには止められていますが(笑)、練習量も今の方が多い気がします。

変わったのは、力の入れ方、身体の使い方ですね。海外の選手は物凄い力、パワーがあるので、力任せに挑むとなかなか勝てません。力の強さではなく、どう身体を動かせば大きな力が出せるか、身体をどう使えばよいのかを考えるようにもなりました。そして、どうやったら得意技にもっていけるか、KOできるポジションに持って行けるか、ですね。

僕の場合は、5歳から習っている空手がベース。最初は空手にはない寝技を覚えるのが大変でしたが、何度も繰り返し練習しているうちに、空手と寝技の動きがリンクする「これだ!」と感じる瞬間があるんです。その感覚を、繰り返し身体に覚えさせました。ベースである空手の技術の感覚を取り戻して磨きをかけるために、帰国中は小さい頃から通っている空手の道場に通っています。空手の技術は、日本でしか学ぶことができないですからね。

“追い込まない”という、堀口流メンタルの高め方

先ほどのメンタルのお話に戻りますが、海外の選手はリラックスが主軸のメンタル調整で、どのように試合で強さを発揮するのでしょうか。

日本は伝統的に長い期間にわたって厳しい練習、負荷の高いトレーニングをしますから、気づかぬうちに精神的にも肉体的にも追い込まれていくんですよね。「明日も練習か、キツイなぁ」みたいなマイナスの感情が生まれて、その状態のまま試合を迎えます。反対にアメリカの場合は毎日フレッシュな身体、疲れがたまっていない身体でトレーニングするため、肉体的にも精神的にも常にプラスの状態なんです。試合の時だけ、今この時だけこの辛さを乗り切る、そういう気持ちになれるから、試合中に心が折れることがないんじゃないかなと思います。練習ではなくて試合に辛さのピークを持って行くことで、「絶対に負けない」という精神的な強さが生まれるんだと思います。

僕の場合は不安を感じないぐらいの練習をして、勝つためのプラン、どうやって相手を仕留めるかというプランをしっかり考えて、自信を持って試合に挑むようにするんです。なので、試合前に不安になることはいっさい無いですね。

試合前も何か特別なことをするわけではなく、思いっきりジャンプして、身体の状態や感覚を確かめるぐらいですね。「よし、キレてるな」みたいな。これは空手の試合に出始めた時から続けていることで、自分のルーティンですね。

堀口さんがこれからの格闘シーンでやりたいこと、次の目標を教えてください。

次の試合からは、階級をひとつあげよう(フライ級→バンタム級)と思っています。上げた階級ではトーナメントも待っていますし、まずは、階級をあげても負けない身体、1日2〜3試合あっても勝てる身体をつくって、必ずベルトを巻きたいです。

そして、格闘技をもっとテレビで放送されるような、よりメジャーなスポーツにしたいですね。そのために、初めて試合を観る人でも勝敗が分かるような、圧倒的な勝ち方、KOするシーンを見てもらえるような戦い方をしなければと思っています。

堀口恭司

総合格闘家。群馬県高崎市出身、アメリカ合衆国フロリダ州在住。
伝統派空手二段、American Top Team 所属。
元修斗世界フェザー級王者。MMA(総合格闘技)の世界最高峰であるアメリカのUFCで、通算成績7勝1敗、フライ級3位。2017年4月日本へ帰国、RIZINへ電撃移籍し、凱旋初戦にて鮮やかな勝利を飾った。

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